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東京地方裁判所 平成2年(特わ)1362号 判決 1993年5月19日

主文

被告人甲を懲役一年六月に、被告人乙を懲役四月にそれぞれ処する。

この裁判の確定した日から、被告人甲に対し三年間、被告人乙に対し一年間それぞれその刑の執行を猶予する。訴訟費用は、その四分の三を被告人甲の、その四分の一を被告人乙のそれぞれ負担とする。

理由

(犯行に至る経緯)

1  被告人甲は、大学卒業後、証券会社勤務等を経て、昭和四五年不動産、有価証券の売買等を目的とするコーリン産業株式会社(その後商号を株式会社光進と変更し、現在に至る。以下「光進」という。)を大阪市北区に設立して、代表取締役に就き、昭和五〇年ころには東京に進出し、関連会社を順次設立して、光進グループと呼ばれる企業グループを形成し、一方、そのころから株式の取引等を手掛け、次第にいわゆる株の仕手筋として知られるようになった。そして、昭和六二年ころからは、被告人甲は、光進等の名義で國際航業株式会社(以下「國際航業」という。)や蛇の目ミシン工業株式会社(以下「蛇の目ミシン」という。)の株式を大量に取得し、昭和六三年一二月には國際航業の発行済株式総数の過半数を獲得してその経営権を実質的に掌握した。

被告人乙は、大学卒業後建築請負会社等に勤務し、昭和五四年六月建築内装等を目的とする常興株式会社(以下「常興」という。)が設立されると、その専務取締役に就任し、昭和五七年には同社の代表取締役に就任したが、昭和六一年同社の経営権を実弟に譲って自らは取締役会長に退き、平成元年一二月には取締役も就任したが、東京都港区赤坂に常興分室を設けて引続き同社の営業に携っていた。

2  被告人乙の経営していた常興が光進グループと取引関係が生じたことから、被告人甲と被告人乙は知り合い、多少の交際があった。ところで、光進グループがいわゆる仕手集団であることや、國際航業を乗っ取ったとして社会的反響を呼んだことから、被告人甲は、証券会社において光進や自己の名義による株式の取引が事実上できない状態となり、知人から名義を借用して株式取引を行っていたが、平成元年七月ころから、被告人乙にも依頼して、同被告人や常興の名義を借りて株式の取引を行っていた。

3  藤田観光株式会社(以下「藤田観光」という。)は、ホテル・旅館業等を目的とする株式会社であり、東京都港区に本店を置き、平成二年二月二八日現在の資本金は一一九億三七四一万七三八五円、発行済株式総数は一億二一九四万六二〇一株であり、その株式は、東京証券取引所(以下「東証」という。)及び大阪証券取引所の各第一部市場に上場されていた。藤田観光の株式については、そのいわゆる浮動株(持ち株数が一〇〇〇株以上五万株未満の株主の保有する株式)の割合が、平成元年一二月三一日現在で約6.39パーセントで比較的小さく、市場関係者の間で仕手筋が手掛けるいわゆる仕手株とみられており、東証や証券会社からも注意銘柄として取引の動向に注意が払われていた。

藤田観光株の株価は、平成二年三月一九日から同年四月一八日までの一か月間の東証における高値が四月一一日の三九〇〇円、安値が三月二二日の三一〇〇円であり、東証における出来高は、三月二二日の七六万二〇〇〇株と四月二日の一〇万七〇〇〇株を除けば、一〇万株を超えたことはなく、一万株に満たない日もあった。なお、同年四月一八日における藤田観光株の高値は三七五〇円、安値は三七一〇円、終値は三七五〇円であり、出来高は一万一〇〇〇株であった。

4  藤田観光は、昭和六〇年七月ころまでに、東急電鉄株式会社(以下「東急」という。)によって一七〇〇万株の株式を買い占められたため、代表取締役Bや常務取締役C(以下「C」という。)は、その対策に苦慮し、同年一〇月ころ、被告人甲に自社の株式を東急から引き取る工作を依頼した。一方、飛島建設株式会社(以下「飛島建設」という。)は、昭和六一年三月期決算での株取引によるいわゆる利益出しに被告人甲の協力を仰いだことなどから、光進のため多額の債務保証をするなど被告人甲との関係が深まっていた。そして、飛島建設と藤田観光との間では業務提携の話が出、そのために双方から出資して株式会社テーエフシー興産(以下「テーエフシー」という。)が設立された。

東急からの藤田観光株の引取り工作を引き受けた被告人甲は、その工作資金等として一〇〇億円を要求し、藤田観光のCは、一〇〇億円の融資の斡旋することとして、昭和六一年一〇月、藤田観光が尽力してオリエントリース株式会社(平成元年四月にオリックス株式会社と商号変更。以下「オリックス」という。)から右テーエフシーが一〇〇億円の融資を受け、これを光進に貸し付けた。そして、被告人甲の工作の結果、昭和六二年二月東急は、所有する藤田観光株のうち七五〇万株を手放し、うち五〇〇万株が藤田観光の親会社である同和鉱業株式会社に譲渡され、残り二五〇万株を被告人甲が取得した。

右オリックスからの一〇〇億円の債務について、光進は昭和六二年六月ころから利息の支払を遅延させ、被告人甲も、一〇〇億円は工作資金及び報酬として貰ったものであるから、それを返済する意思はないと主張したので、Cは、オリックスと折衝して返済期日を再三にわたり延期させる一方、飛島建設の取締役経理部長Dに、オリックスからの一〇〇億円の債務返済問題について解決のための協力を要請し、飛島建設も、被告人甲との関係が深まり光進に多額の債務保証をしていた上、藤田観光との業務提携を進めていたことなどから、右の協力要請に応じることとし、テーエフシーのオリックスに対する債務に担保を入れて連帯保証をしたり、利息の支払を肩代わりした。さらに、Cは、光進から一〇〇億円を回収できる見通しが立たないことから、飛島建設に頼んで光進グループからその保有する藤田観光株を飛島建設側で引き取ってもらい、その際その引取代金に一〇〇億円を上乗せし、それでもって右一〇〇億円の債務を決済してもらって、被告人甲から手を切ろうと考え、平成元年二月ころ、Dの同意を得たうえ、被告人甲に右一〇〇億円の債務の決済方法を提案したところ、被告人甲もこれに同意した。

平成元年七月中旬ころ、右の決済方法に従い、被告人甲は、C及びDとの間で、当時三〇〇〇円台後半であった藤田観光株四〇〇万株を一株四二〇〇円で飛島建設側に売却することを合意していたが、結局その合意を実行せず、一〇〇億円問題は、解決をみなかった。その後も、この問題の解決に向けての動きはあったが、一向に進展せず、Cらは、オリックスに対し返済期限を猶予してもらっていた。

5  被告人甲は、前記のとおり國際航業の実質的経営権を掌握した後、平成元年四月から翌二年二月までの間に、同社及びその子会社から光進グループの株式会社ケーエスジー等に合計約二四〇億円を貸し付けさせたが、これらの実質的借主は光進であった。被告人甲は、平成元年一一月にこのうち五〇億円を返済したものの、残り約一九〇億円の大部分を返済できずにいたところ、このことがマスコミで報道されて問題となり、國際航業から強く返済を迫られたが、返済のめどが立たず対応に苦慮していた。

6  平成二年二月下旬に至り、CとDは、再び一〇〇億円問題解決のため、被告人甲と藤田観光株の引取りについて交渉をした。被告人甲は、そのころ同株六〇〇万株を保有しており、前記國際航業等に対する約一九〇億円の債務の返済資金を得たいと思っていたことから、一株五五〇〇円での取引を主張し、それに対しCが四〇〇〇円台での取引を主張したため、交渉は難航したが、結局同年三月一六日ころ、一株五二〇〇円で取引することで三名の間で合意に達した。ただ、今回は全株を証券会社の媒介により相対で取引することとし、また、買主である飛島建設側が市場価格とかけ離れた価格で取引すると、税法上その差額を寄付金とみなされて課税される懸念があったため、三名の間で、取引時点での市場価格が右の取引価格である五二〇〇円を付けている必要性について話し合われた。そこで、被告人甲は、当時三二〇〇円台で推移していた藤田観光株の市場価格を五二〇〇円まで意図的に引き上げることをあからさまに口にするとともに、それに自信を示し、CとDも、被告人甲の株価吊上げの意図を知りつつ、取引実現のため、株買付け資金を用意するなど同被告人による株価吊上げに加担することとした。

その後、藤田観光で負担する株買付け資金の調達のめどがつかず、同社内に株価吊上げに加担することへの懸念があったことから、右取引の実行が遅れていたが、オリックスへの最終の返済期限が同年四月二七日に迫ったため、同月一六日ころ、被告人甲、C、Dの三名は、前記合意に基づいて、同月二四日に光進等が保有する藤田観光株六〇〇万株を証券会社の媒介により一株五二〇〇円で飛島建設系列の飛島リースに売却すること、被告人甲において藤田観光株の市場価格を右五二〇〇円近くまで吊り上げること、藤田観光がその株価操作のための株買上り資金を準備することなどを取り決め、ここに三名の間で、買上り等の人為的な操作により同株の市場価格を五二〇〇円近くまで吊り上げるという謀議が最終的に成立した。被告人甲は同月一八日、Cに翌一九日から同株の買上りを実行することを伝えた。

7  被告人甲は、藤田観光株の市場価格吊上げのための株買付けを被告人乙に依頼して行ってもらおうと考え、平成二年三月三〇日ころ、同被告人に近々藤田観光株を二〇〇万株ほど買い付けるので名義を貸してもらいたいと伝えた。その後同年四月一八日に、被告人甲は、被告人乙に対し、「藤田観光株を買いたいので名義を貸してくれ、明日の朝から頼みたいので会社にいてくれ。」と具体的に依頼した。

被告人乙は、有利な株情報や常興の営業上の利得を得られるかも知れないとの思惑もあって、被告人甲の依頼を了承し、同被告人の指示に従って買い注文を証券会社に発注することとした。そして、同月一九日午前、以前から常興等の名義で取引のあったナショナル証券会社虎ノ門支店(以下「ナショナル証券」という。)、エース証券株式会社横浜支店(以下「エース証券」という。)、シティーコープ・スクリムジャー・ヴィッカース証券株式会社東京支店(以下「シティーコープ」という。)、大和證券株式会社日比谷支店(以下「大和證券」という。)に、藤田観光の買付け委託の際の条件を問い合わせるなどの準備を行った。

(罪となるべき事実)

第一被告人甲は、前記のとおり一〇〇億円問題及び一九〇億円問題を一挙に解決するため、平成二年四月二四日に光進等が所有する藤田観光の株式六〇〇万株を一株五二〇〇円の市場価格で売買することを約したことに従い、C及びDと共謀のうえ、東京都中央区日本橋兜町二番一号の東京証券取引所が開設する有価証券市場(第一部)に上場されている有価証券である藤田観光の株式について、そのころ三〇〇〇円台後半であった株価を吊り上げることを企て、同市場における同株式の相場を人為的に操作する目的をもって、同月一九日から同月二四日までの四取引日にわたり、別表一記載のとおり、被告人乙及び知人のAを介し、常興及び朝日企画等の名義を用いてナショナル証券ほか四社の証券会社に同株式の買い注文を発注した上、同市場において同株式合計七四万一〇〇〇株を買い付けて(以下「本件買付け」という。)、その株価を買付けの始期における三七八〇円から徐々に高値へと導きその終期には五二〇〇円にまで高騰させ、もって、同株式の売買取引を誘引する目的で、その売買取引が繁盛であると誤解させかつその相場を変動させるべき一連の売買取引を行った。

第二被告人乙は、被告人甲が藤田観光の株式について第一記載の一連の売買取引を行うに当たり、同月一九日後場から被告人甲の依頼を受けて藤田観光の株式の買付け注文を証券会社に出していたところ、同月二〇日後場終了時までに、被告人甲の指示等を通じて同被告人が藤田観光株の株価を人為的に操作する目的を有していることを知るに至ったが、なおもこれを幇助する意思で、同月二三日及び同月二四日の二取引日にわたり、別表一の番号五一ないし一四一及び番号一四四ないし一七九記載のとおり、被告人甲が前記東京証券取引所の有価証券市場において藤田観光の株式合計六〇万九〇〇〇株を買い付けるに際し、同株式の買い注文を証券会社に発注するのに常興及び朝日企画の名義を使用させるとともに、同都港区<番地略>のバルミー赤坂二一一号室の常興分室において、その買い注文をナショナル証券ほか三社の証券会社に発注して伝達し、もって被告人甲の右買付けを容易にして、これを幇助した。

(証拠の標目)<省略>

(争点についての判断)

第一相場操縦罪の成立要件について

一弁護人の主張

1 被告人甲の弁護人は、次のとおり主張する。すなわち、証券取引法一二五条二項一号(平成四年法律第七三号による改正前のもの。現行法の一五九条二項一号に該当する。以下、改正前の条文による。)にいう「有価証券市場における有価証券の売買取引等を誘引する目的」(以下「誘引目的」という。)とは、第三者を売買取引に誘い込む意図であり、「誘い込む」という以上は、行為者の主観面において能動的、意識的に第三者をしてある行為をするように誘い込むことをめざし、ねらうことが必要であると解すべきであり、証券取引法が現実売買について誘引目的のある場合に違法とした趣旨は、有価証券市場のメカニズムを利用し、相場操縦により変動された相場による売買取引に一般投資家を誘い込むことによって、一般投資家に不利益を負わせつつ有価証券市場において自己の利益を図るような行為を禁止しようとするものであると解すべきであり、本件において被告人甲は、上昇させた株価を利用し、市場で一般投資家から不法な利益を得ようとの意図はなかったのであるから、誘引目的を有しなかった。また、誘引目的の有無を判断する前提として、誘引の対象となる取引が何かを明らかにする必要があり、それには当該取引は含まれず、変動された相場に誘引されるということで、通常当該一連の売買取引終了後における取引こそ対象となり、当該一連の売買取引継続中に誘われて行われる取引(提灯売買)も対象となり得るが、それにはそうした提灯売買を積極的に利用するという特段の事情が存したことを要すると解すべきである。しかるに、被告人甲は、買付け後に売抜けを図る典型的な相場操縦のように、本件買付けにおいては売抜けを意図していなかったから、当該一連の売買取引終了後の取引を誘引する意図は有しておらず、また、提灯売買を極力排斥しようという動機と意図の下に行動していて、当該一連の売買取引継続中の取引を誘引する意図も有していなかったから、被告人甲には誘引目的はなかった。

2 被告人乙弁護人の主張の要旨は、次のとおりである。すなわち、誘引目的とは、実行行為をする動機であると解すべきところ、被告人乙は、被告人甲から一〇〇億円問題等の背景的事情はもちろん、今回藤田観光株を買い付ける動機も全く明かされていなかったから、被告人乙には実行行為をする動機がなく、したがって、誘引目的はなかった。また、「有価証券等の相場を変動させるべき一連の有価証券の売買取引」(以下「変動取引」という。)に関する認識としては、一連の売買取引により相場が変動するであろうという認識では足りず、相場を支配する意図を有することが必要であると解すべきところ、被告人乙は、そのような意図を有していなかったから、相場操縦罪の故意がなかった。

二当裁判所の判断

1 証券取引の公正を確保し、自由で公正な証券市場を維持することは、投資家を保護するとともに、証券市場を通じての国民経済の適切な運営という証券取引法における所期の目的を達成するためには、欠くことのできないことである。証券取引について不公正な行為が行われ、証券市場が人為的に動かされあるいは不明朗な色彩を帯びてくるならば、証券取引に参加する個個の投資家の利益が侵害されるのみならず、投資家一般の証券市場に対する信頼が失われ、証券市場が国民経済の運営において果たす役割は大きく損なわれかねない。特に、近年わが国の証券市場において広範で多数の一般投資家の参加が増え、一方では証券市場の国際化が進み、また企業の資金調達市場としての機能が重要視されている状況下にあっては、それら投資家を保護し、かつ証券市場の役割維持のためにも、証券市場における公正確保ということが一層重要な課題となっており、このことは証券取引の公正確保のための規定を解釈するに当たってもしん酌すべきであるといえる。ところで、証券取引法一二五条は、投資家を保護し、自由で公正な証券市場を確保するという目的を達成するため、有価証券の売買取引に関連して、その売買取引の状況や有価証券の相場について不当な影響を与える行為を禁止している。すなわち、同条一項は、他人に誤解を与える目的でする仮装売買や馴合売買の偽装取引を禁止し、二項は、現実の売買による相場操縦と、情報流布や虚偽表示による相場操縦を禁止しているのであるが、これらはいずれも、有価証券の売買取引は、公開された公正な情報に基づく自然かつ正常な需給関係に従って行われるべきものであり、それら情報を操作しあるいは正常な需給関係を人為的、恣意的に操作するなどして、投資家の売買取引に関する判断を誤らせる結果をもたらす行為を禁圧しようとするものと解される。そこで、本来自然かつ正常な需給関係によるべき売買取引を人為的に歪めるものを排除するという見地から、右一二五条で禁止している行為について改めて考察すると、一項の仮装売買や馴合売買は、それ自体正常な需給関係を乱すものであり、また、二項二号の市場操作に関する情報流布や同項三号の売買取引に当たっての虚偽表示は、不正な内容の情報や誤った情報を与えて人為的に正常な需給関係を乱そうとするものであって、これらはいずれも、その行為自体が不法性を帯びているものといい得る。これらと並んで、同法一二五条二項一号は、「有価証券の売買取引を誘引する目的をもって」「売買取引が繁盛であると誤解させ、又は有価証券の相場を変動させるべき一連の有価証券の売買取引をすること」を禁止し、誘引目的をもってする現実の有価証券の売買取引を、自然で正常な需給関係を乱すものとして禁止しているのである。しかし、他人の売買取引を誘引すること自体は、いかなる売買取引にも大なり小なり伴うものであり、自然で正常な需給関係に基づく売買取引が他人の売買取引を誘引することがあったとしても、それ自体は排除されるべきことではないので、一般的に他人の売買取引を誘引するという目的があるということ自体からは、同条二項一号の禁止しようとする違法な売買取引を導くことはできない。そうすると、むしろその誘引の原因となる売買取引の状況や有価証券の相場の状況をつくり出す売買取引そのものに、自然で正常な需給関係を乱すものとして禁止される根拠を見出すべきものと解される。そして、そうした自然で正常な需給関係を乱す売買取引とは、人為的に売買取引が繁盛であると見せかけ、あるいは人為的に有価証券の相場を操作しようとの目的の下に行われる売買取引であるといえる。したがって、証券取引法一二五条二項一号にいう誘引目的というのは、その誘引という言葉自体に意味があるのではなく、それは、売買取引が繁盛であると見せるあるいは有価証券の相場を変動させる売買取引が、意図的、目的的に行われることを抽象的に表現したものであって、人為的に売買取引が繁盛であると見せかけ、あるいは人為的に有価証券の相場を操作しようとの目的と言い換えることができると解される。このように解することによって、右証券取引法一二五条二項一号の禁止しようとする行為をよりよく捉えられると考えられる。そして、この目的の存否は、もちろん当事者の供述からそれが明らかにできることはあるが、そうした供述によることなく、取引の動機、売買取引の態様、売買取引に付随した前後の事情等から推測して判断することは十分可能であり、その際には、売買取引の態様が経済的合理性をもったものかどうかが、人為的に相場を操作しようとの目的を窺わせるものとして、重要な意味を持つといえる。

また、証券取引法一二五条二項一号にいう変動取引とは、有価証券市場における当該有価証券の相場を変動させる可能性のある売買取引を指すと解すべきであり、それに当たるか否かは、実際の相場の値動きの状況はもちろん、該当期間中の売買取引全体に占める該当売買取引の割合、当該売買取引の態様等の事情も考慮して判断されることとなる。

2 なお、東京高等裁判所昭和六三年七月二六日判決(昭和五九年(う)第一六三〇号・高等裁判所刑事判例集四一巻二号二六九頁、いわゆる協同飼料事件控訴審判決)は、誘引目的とは、有価証券市場における当該有価証券の売買取引をするように第三者を誘い込む意図であり、他のいわゆる目的犯の目的と同じで、実行行為をする動機であり、変動取引とは、有価証券市場を支配する意図をもってする、相場が変動する可能性のある取引のことであると判示する。なるほど、右判決が、誘引目的についてその誘引という言葉にはさしたる意味はなく、むしろ誘引の原因となる変動取引がいかなる意図で行われたかに着目すべきことを示した点は、鋭い考察というべきであるが、その「有価証券市場を支配する意図をもってする」という内容がいささか漠然としている嫌いがあるのみならず、変動取引に主観的要素と客観的要素の二つを盛り込むことによって、行為に違法性を付与するものとして主観的要素が要求されている趣旨をあいまいにする恐れがあると考えられるので、その主観的要素はやはり主観的要件である誘引目的の内容として理解するとともに、その内容は前記のように解釈するのが相当と考えられる。また、右判決は、誘引目的を「有価証券の売買取引をするように第三者を誘い込む意図」と定義し、さらにそれを「実行行為をする動機」と言い換えている。ここでいう「実行行為をする動機」とは、右判決が「他のいわゆる目的犯の目的と同じ」であると判示し、一方他の箇所で、「この(誘引)目的は、他の目的犯の場合と同様に、その内容であることがら、この場合には、有価証券市場における当該有価証券の売買取引をするように第三者を誘いこむことを意識しておれば足りるのである。」と判示していることから、主観的要素である誘引目的の意識の程度を表現を変えて言い換えたに過ぎないとみるべきである。したがって、右判決が「実行行為をする動機」という言い方をしていることから、それには、相場を変動させるべき一連の売買取引をするに至る動機、背景事情を自ら有しあるいはそれらを認識していることを要求しているものと解釈するのは正しくない。この動機、背景事情は、誘引目的を推認させる有力な状況証拠ではあるが、その内容自体にはならないと解すべきである。

3 検察官の公訴事実においては、買付け及び売付けの売買取引全体が、「当該有価証券の売買取引が繁盛であると誤解させるべき一連の売買取引」(以下「繁盛取引」という。)に当たると同時に変動取引に当たるとされているが、この繁盛取引とは、出来高が多く売買取引が活発に行われていると誤解させるような一連の売買取引を意味すると解されるところ、実際には、相場の変動をもたらすような一連の売買取引が行なわれれば、売買取引が繁盛であると誤解させる結果は生じると当然推認されるので、変動取引の要件充足とは別個に繁盛取引の該当性をことさら検討する必要性はないと解される。

4 各弁護人の主張を検討する。

被告人甲の弁護人は、証券取引法一二五条二項一号の趣旨は、有価証券市場のメカニズムを利用し、相場操縦により変動された相場による売買取引に一般投資家を誘い込むことによって、一般投資家の不利益の下に有価証券市場において自己の利益を図るような行為を禁止しようとするものであるとして、そうした有価証券市場において自己の利益を図るような行為の有無によって、誘引目的の存否を判断すべきであると主張するが、誘引目的は、人為的に相場を操作しようとの目的と解すべきであることは、前記のとおりであり、そう解することによって、自由で公正な有価証券市場を確保し、あわせて広く一般投資家の利益を保護するという相場操縦処罰規定の立法目的を達成し得るものといえるので、それ以上に有価証券市場において自己の利益を図るような行為を要求することは、相場操縦罪の成立範囲を狭め、右立法目的を達成しえなくするものであるから、右の主張は採ることができない。また、相場操縦罪は、自由で公正な有価証券市場の確保、有価証券市場での公正な価格形成の確保という一般的、抽象的利益を保護法益とするものであるから、一連の変動取引について誘引目的がある場合には、有価証券市場の公正を損なう危険性があるものとして成立する、いわゆる抽象的危険犯であると解され、一連の売買取引が現実に他人の売買取引を誘引したか否かは、問うところではないと解される。したがって、他人の売買取引について、それが誘引されるものかどうかを検討し、相場操縦罪の成立範囲は、現実に誘引される可能性のある売買取引が対象となる範囲に限定されるべきであるとする弁護人の主張は、独自の見解であって、採用できない。

被告人乙の弁護人は、被告人乙は、一〇〇億円問題等の動機、背景事情を知らず、実行行為をする動機がなかったから、誘引目的もなかったと主張する。この主張は、誘引目的とは実行行為をする動機をいうとした前記の協同飼料事件控訴審判決の判示部分を援用したものとみられるが、実行行為をする動機を、有価証券の売買取引をするに至る動機、背景事情を自ら有しあるいはそれらについての認識を有することを意味するものととらえることが、右判決の理解として正しくないことは、前記のとおりである。また、被告人乙の弁護人は、変動取引とは相場を支配する意図を有することが必要であると主張するが、前記のとおり、変動取引とは市場価格を変動させる可能性のある売買取引を指すと解すべきで、それ以外に、相場を支配する意図を有することを要しないと解すべきであるから、右の弁護人の主張も採用できない。

第二本件相場操縦罪の成否について

以上示した相場操縦罪の成立要件についての当裁判所の判断を基に、本件において具体的に相場操縦罪の成否を検討する。

一変動取引の要件の存否

関係各証拠によれば、本件買付け期間中の東証における藤田観光株の株価は、平成二年四月一九日に、本件買付け開始時の株価三七八〇円から終値の三九〇〇円まで一二〇円上昇し、二〇日は、終値が四四〇〇円で前日の終値と比べて五〇〇円上昇し、二三日には、終値が四八九〇円で前取引日の終値と比べて四九〇円上昇し、二四日には、本件買付け終了時の株価が五二〇〇円で、前日の終値と比べて三一〇円上昇していること、この間の本件買付けの株数及び右の四取引日における出来高全体に占める割合は、四月一九日が三万二〇〇〇株で47.1パーセント、二〇日が九万五〇〇〇株で52.2パーセント、二三日が三五万六〇〇〇株で66.8パーセント、二四日が二五万八〇〇〇株で62.6パーセント、合計で七四万一〇〇〇株で62.0パーセントとなっていることが認められる。このように、本件買付けは大量でありかつ全体の出来高に占める割合が高く、その期間中藤田観光株の相場に顕著な変動が見られることから、本件買付けがその期間中の同株の株価の上昇をもたらしたことは明らかである。よって、本件買付けは、市場価格を変動させる可能性のある売買取引であり、変動取引の要件を満たす一連の売買取引であることは優に肯定できる。

二変動取引に当たる一連の売買取引の範囲

関係各証拠によれば、別表一の番号一四二及び一四三の買付けは、被告人甲が知人のAに依頼して行ったものであり、被告人乙には全く知らされていないことが認められる。しかし、右買付けも、被告人甲が藤田観光株の株価の吊上げを図る本件買付けの一環として行ったものであることが認められ、それが、被告人甲の関係で変動取引に当たる一連の売買取引の範囲に含まれるのは明らかであるが、被告人乙の関係では、同被告人には右の買付けについて全く認識がなかったのであるから、その責任範囲から除かれる。

次に、被告人乙の行った本件売付け(別表二記載のとおり。以下「本件売付け」という。)が一連の売買取引の範囲に含まれるかを検討する。関係各証拠によれば、①本件売付けの対象となった藤田観光株は、いずれも被告人乙が個人で買付けたもので、平成元年七月二〇日から同年九月一日にかけてエース証券で信用で買い付けその後現引した合計二万二〇〇〇株、同年四月二日に同じくエース証券で買い付けた五〇〇〇株とナショナル証券で買い付けた一万株、及び同月一九日後場の本件買付けの開始直前にエース証券で買付けた一万株であり、このうち、エース証券の分三万七〇〇〇株は、いずれも四月二三日の後場で売られ、ナショナル証券の分一万株は、四月二四日の前場で売られていること、②被告人乙が個人で保有していた藤田観光株のうちエース証券の分には信用建玉が含まれていたが、四月二三日の前場で被告人乙がエース証券のAに売付けを指示したところ、同人から信用のまま売るよりも現引きしてから売却した方が税金面で有利であるとの忠告を受けたため、急きょ右の信用建玉を現引し、前場が午前一一時に終了したので、後場に売り注文を出すこともあったこと、③被告人乙は、本件買付けの直接の理由や一〇〇億円問題等の背景事情については、一切被告人甲から知らされておらず、一方、被告人甲は、被告人乙が個人で持っている藤田観光株の売付けについては、もともと被告人乙が自らの判断で行うべきもので、関知すべきものとは考えていなかったこと、④本件売付けのうち、エース証券の分は事後に被告人甲に知られることとなったが、これは、エース証券のAの被告人乙への売付けの報告がたまたま常興赤坂分室に居合せた被告人甲の耳に入ったためであり、ナショナル証券の分は、被告人甲に知られることなく手続が終了したこと、がそれぞれ認められる。なお、被告人甲と被告人乙の各検察官調書には、いずれも本件売付けが甲の事前の了解を得て行われたという趣旨の供述があるが、被告人甲の検察官調書は、供述に変遷があるうえ内容も曖昧であり、被告人乙の検察官調書は、信用建玉を現引いた状況や四月二四日の売付けの状況に触れていないなど、いずれも信用性に乏しいものである。そして、右認定される事情からすると、本件売付けは、被告人乙が被告人甲の指示ないしは了解を得ないまま、個人で保有していた藤田観光株をひそかに売り抜け利益を得たいという、被告人乙の個人的な意図の下に行われたものであり、被告人甲による本件買付けとは無関係に行われたものというべきであるから、本件相場操縦を構成する一連の売買取引には当たらないと認められる。

三被告人甲の責任について

1 誘引目的の存否

関係各証拠によれば、先に犯行に至る経緯で示したように、被告人甲は、藤田観光のCや飛島建設のDとの間で、その保有する藤田観光株六〇〇万株を一株五二〇〇円の単価で売買することを約し、その際税務対策上同株の市場価格が右取引価格と同一であることが必要であったことから、被告人甲は、同株に五二〇〇円の市場価格を付けるため、自ら同株の買付けによってその市場価格を意図的に吊り上げることを決意していたこと、C、Dもその株価吊上げを了解し、買付けのための資金を準備したこと、その資金を使って被告人甲が本件買付けを行ったこと、本件買付けの終了後、約束に従い被告人甲保有の藤田観光株六〇〇万株が市場価格の五二〇〇円の単価で取引されていることが認められる。したがって、被告人甲の本件買付けを行う直接の目的が、藤田観光株の市場価格を人為的に吊り上げることそれ自体にあったのであるから、被告人甲に、同株の株価に関し人為的に相場を操作しようとの目的があったことは明らかである。

また、被告人甲は、自己の行う一連の本件買付けが変動取引にあたることも十分認識していたと認められる。

なお、本件買付けの態様をみると、わずかな例外を除いて、全ての注文が直前の約定値と同一か、それより高い値段で発注されており、いわゆる板(ある時点における買注文と売り注文の分布状況の表示)の上値を追った買上りであることが認められ、例外的に直前の約定値より安い値段で発注されたものの中には、四月二三日前場における直前の約定価格より五〇円安い四五五〇円での二万株の買い注文、同日の後場開始前における前場の終値四七三〇円より三〇円安い四七〇〇円での二万株の買い注文、二四日後場における直前の約定価格より四〇円安い五〇五〇円での二万株の買い注文のように、いわゆるカンヌキ(下値での買支え)として発注されたものがあることが認められる。これらは、直前の約定価格より安い価格で大量の買い注文を出すことによって、一般の投資家に買いが強いという印象を与えて、これらの者に安心して買い注文を出させることにより、相場が下がるのを人為的に防ぐことを狙ったものであり、株価を上げる際のテクニックの一種であると理解できる。また、四月二〇日にはストップ高(藤田観光株の場合、五〇〇円の値幅制限いっぱいの値上り)を記録し、四月二三日にも殆どストップ高に近い値上り(前の取引日の終値と比べて四九〇円の値上り)を記録していること、同日の後場終了間際の極く短時間に合計四万株という大量の成行による買い注文を出し、四九〇〇円で買い閉まっていること、四月二四日前場に五一〇〇円を付けると、その後場に二〇万株という大量の買い注文が出され、五二〇〇円で売買が成立すると、直ちにその余の注文が取り消されていることも認められる。これら一連の本件買付けの態様をみても、本件買付けが、藤田観光株の株価に関し人為的に相場を操作しようとの目的で行われたことを推認させるに十分である。

2 責任

以上のとおり、被告人甲が誘引目的をもって、相場を変動させるべき一連の売買取引に当たる本件買付けを行ったことが認められるので、被告人甲について相場操縦罪の成立が肯定させる。なお、被告人甲の責任形式については、被告人乙の責任形式と併せて後に判断する。

四被告人乙の責任について

1 検察官及び弁護人の主張

検察官は、被告人乙は変動取引について認識を有していたことはもとより、被告人甲が藤田観光株を吊り上げる意図であることを知っており、自らもそれに加担する積りであったから、被告人乙自身にも誘引目的があったと主張する。これに対し弁護人は被告人乙は被告人甲が本件買付けを行おうとしている動機や背景事情を知らず、ただ被告人甲が藤田観光株を大量に取得しようとしているものと考えていたに過ぎないから、被告人甲の株価吊上げの意図すなわち誘引目的について認識することはなかったと主張する。

2 誘引目的の存否

(一) 被告人乙は、自らの発意で藤田観光株の買付けの発注を行ったものではなく、被告人甲の依頼に基づいて行ったに過ぎないので、同株の買付けについて自発的な目的を有していたことはなく、また被告人乙が、被告人甲から本件買付けの直接の理由や一〇〇億円問題等の背景事情について、一切知らされていなかったことは、関係証拠上も明らかであるので、従前からの被告人甲との関係、本件買付けについて協力依頼を受けた経緯、本件買付けに当たっての被告人甲の指示内容等から、被告人乙が、被告人甲の本件買付けの目的、意図をいかに認識していたかを検討すべきことになる。

そこで、関係各証拠によると、以下の諸事実が認められる。すなわち、

(1) 被告人甲は、株の仕手筋としてや國際航業の乗っ取りで知られたため、他人の名義を借りて株売買を行わざるを得ない状況にあり、かねてより知っていた被告人乙は株に関する知識は素人同然であったが、律義で口も堅そうなので、同被告人に株の売買を依頼することとし、本件前年の平成元年七月一七日以降、同被告人を使って藤田観光株を含めて東洋酸素、蛇の目ミシン等のいわゆる仕手株数銘柄の売買を行うようになっており、一方、被告人乙も、被告人甲が有力な仕手筋であり、國際航業の株を買い占めて同社を乗っ取ったり、蛇の目ミシンの株を買い集めて大株主となっていることを知っていたこと

(2) 本件以前の平成元年七月一七日以降平成二年四月二日までの間に何度かにわたって、被告人甲の指示により被告人乙は藤田観光株を買い付けたことがあったが、それは断続的であって連日行うことはなく、当日急きょ指示されるというものであったこと

(3) 被告人甲から、平成二年三月三〇日ころ、藤田観光株約二〇〇万株の買付けを行うと言われ、さらに四月二日同株を三五〇〇円の指値で五万株買うよう指示されたため、被告人乙は、ナショナル証券のEにこの買付けを委託して、三四三〇円から三五〇〇円までの値段で同株合計五万株の買付けを行い、その際Eから、買い注文が五万株を超える場合には担保を入れるなどといった条件を言われたため、それを被告人甲に伝えたこと

(4) その後、被告人甲から買付けに関する指示はなかったが、四月一八日に突如、翌日から藤田観光株の買付けを行う旨の連絡があったこと

(5) 四月一九日午前、被告人甲から「今日の午後からやるよ。板を読んでおいてくれ。」と指示があったため、被告人乙は、ナショナル、エース、シティーコープの各証券会社に藤田観光株を数万株買い付けたいとしてその条件を問い合わせたところ、ナショナル証券は特に条件なく応じてくれることとなったが、他の二社には前受金が必要といわれたことから、さらに知人が口座を有していた大和證券に問い合わせて、蛇の目ミシ株一〇万株を担保に取引に応じる了解を得、こうして買付けの委託先を整え、同日午後、そのころ三七八〇円の値であった藤田観光株について、被告人甲から三九〇〇円までの売り物を全部買うようにとの指示を受けて、ナショナル証券のEと大和證券のFに買い注文を出し、同日には同株合計三万二〇〇〇株の買付けを行い、同株の終値は三九〇〇円であったこと(なお、被告人乙は、ナショナル証券では常興名義で、大和證券では朝日企画名義で、後に出るエース証券では常興名義で、シティーコープでは朝日企画名義でそれぞれ買付けを行っている。)

(6) 翌四月二〇日午前中、被告人甲が常興赤坂分室を訪れ、四一五〇円まで藤田観光株の売り物を全部買うよう指示したので、被告人乙は、同日前場でナショナル証券のEに買い注文を出し、四〇五〇円から四一五〇円までの値段で同株合計二万四〇〇〇株の買付けを行ったが、前場終了後、右Eから証券会社を分散するように助言されたため、同日後場では、ナショナル証券と大和證券に加えてエース証券のAに東洋酸素株一〇万株を担保に買付けを担当してもらうこととし、同日後場開始前、被告人甲から「四四〇〇円まで買え。今日の後場四四〇〇円で引いてくれ。」と指示を受けたので、同日後場被告人乙は、右の証券会社三社に買い注文を出して、四二四〇円から四四〇〇円までの値段で同株合計七万一〇〇〇株の買付けを行い、特に、午後二時に四四〇〇円の価格を付けた後も、約一時間にわたって売り物を拾い続け、その買い付けた最高値段の四四〇〇円は、同株の同日の終値で、前日比五〇〇円高のいわゆるストップ高であり、被告人乙は終値で四四〇〇円を付けたことを被告人甲に報告したこと

(7) 四月二〇日に続く取引日である同月二三日の前場で、被告人甲から四六六〇円まで藤田観光株の売り物を全部買うようにとの指示を受けたので、被告人乙は、ナショナル証券のEとエース証券のAに買い注文を出し、四四九〇円から四六六〇円までの値段で同株合計五万九〇〇〇株の買付けを行い、さらに同日前場終了後、被告人甲が常興赤坂分室を訪れ、四九〇〇円まで買うよう指示したので、被告人乙は、同日後場での右の証券会社二社に加え大和證券のFに買い注文を出し、四六六〇円からストップ高の四九〇〇円までの値段で同株合計二九万七〇〇〇株の買付けを行い、同日の同株の終値は四八九〇円であり、この日の前場・後場には、先にも述べたよううに、カンヌキに当たる買い注文が出されており(なお、この点は後述する。)、さらに同日後場終了後、被告人乙は、エース証券のAから「上司から藤田観光株の注文を受けてはいけないと言われた。」旨伝えられていること

(8) 四月二四日午前中、被告人甲が常興赤坂分室を訪れるとともに、「五一〇〇円まで買ってくれ。今日は、どうしても前場を五一〇〇円で引かせるように頼んでくれ。」と指示したので、被告人乙は、前場でナショナル証券のEと大和證券のFに買い注文を出し、四八九〇円から五一〇〇円までの値段で藤田観光株合計一二万五〇〇〇株の買付けを行ったが、同日昼ころ、右Fから「本部の売買監査部からアラームが入ってしまい、藤田観光株の注文は受けられなくなってしまった。」旨伝えられたこと

(9) 四月二四日前場における藤田観光株の引け値は五一〇〇円であったが、前場終了後被告人甲からなおも「五二〇〇円までもって行ってくれ。」と言われたため、被告人乙は、前場終了時までにいずれも同株の買付けを断ってきた先の証券会社三社に代って、シティーコープに五億円の前受金を条件に買付けを行ってもらうこととし、後場開始前にシティーコープのGに同株を五二〇〇円まで買い上がるように指示し、四八九〇円から五二〇〇円の値段で同株合計一二万八〇〇〇株の買付けを行い、同日午後二時一二分ころ、Gから同株の株価が五二〇〇円となったと伝えられるや、それを被告人甲に伝え、その後買い注文を全て取り消したこと

(10) 四月二五日以降も、被告人甲から被告人乙に藤田観光株買付けの依頼があり、これに基づいて、被告人乙は買い注文を出したが、被告人甲の指示の仕方は、同月二四日までとは全く異なり、板の下値に近い値段で一定の株数を集めるものであったこと

がそれぞれ認められる。

(二) こうした諸事実に照らして、本件藤田観光株の買付けに対する被告人乙の認識を判断すると、被告人甲の依頼を受けた被告人乙が藤田観光株の買付け注文を最初に証券会社に出す四月一九日後場開始以前の段階では、被告人甲の指示内容はせいぜい、そのころ三七八〇円であった藤田観光株を三九〇〇円まで買うようにといった内容のもので、それが、それまで何度か被告人甲から藤田観光株の買付けを依頼された際のもと、特に異ったものであったか明らかではなく、その他の依頼の経緯、状況等を考慮して判断しても、いまだ被告人乙が、被告人甲が藤田観光株の株価の吊上げを目的として買上げを行おうとしているものとまでは認識し得たか疑問であるといわざるを得ない。しかし、一九日後場から買付けを始めると、その日は被告人甲の言った三九〇〇円まで買い進み、終値がその値段で終わると、翌二〇日の前場には、それまでなかったのに被告人甲が常興赤坂分室を訪れて、同被告人から傍らで直接前日の終値より高い四一五〇円まで買うよう指示され、さらに後場開始前に、その日ストップ高である四四〇〇円まで買うように、しかもその日の後場はその値段で引くよう指示されており、前場終了後には証券会社外務員から証券会社を分散するよう助言があったため、後場には証券会社三社に注文を出して、四四〇〇円までの値段で買い付け、しかも四四〇〇円の値を付けた後も売り物を拾い続けて、四四〇〇円の値を維持し、その値段で終値を付けているのであって、被告人乙自身もこれら一連の事柄は認識していたのであるから、被告人乙は、遅くとも四月二〇日の後場終了までには、被告人甲が藤田観光株の株価の吊上げを目的としていることを認識したものと認めることができる。

なお、前記のとおり、四月二三日前場と同日後場開始前、さらに同日二四日後場においてそれぞれいわゆるカンヌキに当たる買い注文が出されているが、このうち、最初の四月二三日前場のものについては、被告人乙の検察官調書(<書証番号略>)、被告人甲の公判供述、Eの証言及び検察官調書によれば、ナショナル証券のEが、藤田観光株の株価が下がらないようにするため下値での買支えを提案し、これを聞いた被告人乙が被告人甲に伺いを立てたところ、被告人甲もこれに賛成し、被告人乙に「カンヌキ」という言葉を教えたことが認められ、また、同月二四日後場のものについても、被告人乙の検察官調書(<書証番号略>)及びGの検察官調書によれば、同様に下値での買支えのためであったと認められる。このように、株価下落の防止策であるカンヌキとなる買い注文を出すということも、人為的に相場を操作することにほかならず、被告人乙がこのような買い注文を抵抗なく発注したということは、四月二〇日の後場終了までに、被告人甲の目的が株価の吊上げにあることを認識していたことを裏付けているというべきである。しかも、カンヌキの提案が証券会社の外務員から出たということは、それまでの被告人乙の買い注文の出し方等から、株価の吊上げを意図しているものとこれら外務員が覚ったということであるから、被告人乙においても、被告人甲の指示の仕方等からそれが株価吊上げを目的としたものと認識できたことを推測させるといえる。また、四月二四日前場及び後場において、被告人甲が明らかに藤田観光株の株価の吊上げを目的とした買い注文を出すように指示したのを受けて、被告人乙がこれを発注していることは、前記認定のとおりであり、これも、被告人乙が被告人甲の株価吊上げの目的を既に承知していたことを裏付けるものである。

以上のとおり、被告人乙は、遅くとも四月二〇日の後場終了までには、被告人甲の目的が藤田観光株の吊上げにあることを認識し、その認識を持ちながら、四月二三日及び同月二四日において、被告人甲の同株の買付けに協力したと認められるのである。

(三) 検察官は、①被告人甲が被告人乙に藤田観光株を二〇〇万株くらい買い上がると伝えていたこと、②被告人甲が本件買付けの期間を被告人乙に告げていたこと、③被告人甲が被告人乙に同株を買い上がる際のポイントを告知していたこと、④被告人乙自身四月一九日に山本陽一名義で同株を一万株買い付けていることなどから、被告人乙は、四月一九日に被告人甲による本件買付けの開始される時点で、既に被告人甲の買付けの意図が同株の株価吊上げにあることを知っており、誘引目的の認識もあったと主張する。そこで、これらの点について検討する。

被告人甲が被告人乙に二〇〇万株くらい買い上がると伝えていたかどうかという点については、その旨の被告人甲の公判供述(第三回)がある。しかし、この供述自体は簡単なもので、ここからは、被告人甲が「二〇〇万株くらい買い上がる」と伝えたのか、「二〇〇万株くらい買い付ける」と伝えたのか、確定することができない。のみならず、株価については具体的に言及されることなく、二〇〇万株くらい買い上がるとの言葉から、直ちに株価の吊上げを意図していると察知することは困難である。

次に、被告人甲が本件買付けの期間を被告人乙に告げていたかどうかという点について、シティーコープのGは、その検察官調書(<書証番号略>)において、四月一九日に被告人乙から、「四月一九、二〇、二三、二四日の四日間で、藤田観光株を三万ないし五万株買いたい。」という申入れがあり、同月二〇日にも同様の申入れがあったと述べており、同調書にはその旨の記載のある同人の顧客管理ノートが添付されている。この点は、被告人乙、被告人甲が共に公判廷で否認し、両名の検察官調書にも記載がなく、被告人乙の弁護人は、ことを隠密に運ぶ必要上、被告人甲が買付け期間のような機密事項を被告人乙に漏らすとは考えられず、もし被告人乙がGに買付け期間を伝えたとすれば、他の証券会社の外務員にも連絡しているはずであるが、これらの者の検察官調書にはその旨の記載がないことなどから、Gの右調書の信用性を疑い、右のノートは、当日記載されたものではなく、大蔵省の呼出しを受けて本件が社内で問題となってから記載された疑いがあると主張する。しかし、右のノートの記載は、日々の業務を遂行する過程で記載されたもので、後に作為的に記入されたことを窺わせるようなものではないと認められるのであり、そうした記載があるということは、Gが被告人乙から知らされていたためであると考えざるを得ず、被告人乙は、その買付け期間を被告人甲から告げられたものと推測される。なるほど、被告人甲が本件買付けを行うに当たって、あえて被告人乙に買付け期間を告げなければならないことはないが、被告人乙が四月二〇日から大阪に出張する予定であったところ、藤田観光の取引日程がオリックスに対する返済期限から同月二四日と決められており、被告人甲自身も前記の一九〇億円問題を解決する必要に迫られていたのであるから、出張日程を変更してでも被告人乙に本件買付けを実行してもらう必要があり、そのため同被告人に買付け期間を告げることがあったとしても不自然ではなく、被告人甲が買付け期間を告げた可能性は十分あるのである。したがって、被告人甲が被告人乙に本件買付け期間を告げた事実があると認められる。しかしながら、被告人乙がこの点を告げられていたとしても、被告人乙は、例えば、被告人甲が限られた期間内に株数を集めようとしているものと考えたという可能性もあり、それをもって、被告人甲が株価を吊り上げる目的を有していると認識したと直ちに認めることは困難であるといわざるを得ない。

さらに、被告人甲が被告人乙に買上りのポイントを告知したかどうかの点について、被告人乙は、検察官及び公判を通じてこの事実を認めていないが、被告人甲は、検察官調書(<書証番号略>)及び公判(第三回)を通じて、被告人乙に本件買付けの依頼をした際、藤田観光株を買い進む際のポイントとして、市場価格が四五〇〇円くらいになると、平成二年二月の新株の無償増資を受けた株主が計算上儲けが出たとして売りに出てくる可能性があり、また、新高値をつけた際にもまとまった売り物が出てくる可能性が強いので、これらの点に留意してかかるようにと言ったと供述する。確かに、被告人甲の右供述は具体的であり、右の二点に留意して売り物を買いさらえば、後は売り物が少なくなって株価の値上げを比較的容易に行えると、被告人甲が考えていたことは事実と認められる。しかし、買い値をはじめ買い方について細かく指示を与えている被告人乙に対して、右のような買い方のテクニックともいえる事柄についてあえて事前に注意を与える必要があったかは疑問であり、右のポイントを告知した時期についても、被告人甲の捜査段階における供述によると、四月初旬か、四月一九日ころか明確ではなく、また、本件買付けの実行に当たって被告人乙の行動にこのポイントを意識したと見られる点は、特に窺えないのである。したがって、右の被告人甲からのポイントの告知があったと認めるには、いまだ疑いが残るといえる。加えて、被告人乙がこのようなポイントを告げられたとしても、その意味するところについて被告人甲の思うとおり理解し得たのか疑問でもあり、たとえ右のポイントを告知されたことがあったとしても、それをもって、被告人乙が被告人甲の株価吊上げの意図までを認識したと認めることはできない。

被告人乙は、前記のとおり、四月二日に被告人甲から五万株の買付けを指示された際に個人で合計一万五〇〇〇株、また、四月一九日に本件買付けを指示された際にも個人で一万株、それぞれ藤田観光株を買い付けている事実が認められる。これらについて、被告人乙は、検察官調書(<書証番号略>)において、四月一九日午前板を読むよう指示を受けた際、被告人甲が今回二〇〇万株ほど買いたいと言っていたことから、どこまで本当であるのかという警戒心は持ちながらも、かなり大量の株を買うことは間違いないだろうから途中で売れば儲けられると思って、便乗買いをしたと供述するところ、被告人乙としては、これまで被告人甲の株売買にいくらか関与してきた経験から、同被告人の買う株については株価の値動きがあり、値上りすることもあるということを知っており、その値動きに乗って儲けようとの意識から行ったに過ぎないと考えることが可能であり、右買付けの事実から、被告人乙が被告人甲の株価の吊上げの意図を明確に認識したとまで認定することは困難である。

したがって、検察官の挙げる点から、被告人乙が、被告人甲から本件買付けの依頼を受けた当初から、同被告人が株価を吊り上げる目的を有していると認識していたと認定することは困難であるといわねばならない。

なお、被告人乙の検察官調書(<書証番号略>)には、四月一九日午後、被告人甲から三九〇〇円まで売り物を全部買うようにと言われた本件買付け開始の時点で、その指示がそこまで買い上がって株価を吊り上げるようにという指示であると判ったという供述があるが、右の指示によって、そこまで十分認識し得たか疑問であり、その他の被告人乙の検察官調書においても、本件買付け開始以前に被告人甲が株価吊上げの目的を有していることを被告人乙が認識していたと、積極的に認定するに足りる記載は見出だせない。

(四) 被告人乙の弁護人の主張について検討する。

被告人乙の弁護人は、被告人乙は、被告人甲が本件買付けを行おうとしている動機、背景事情は一切知らなかったし、本件前年の平成元年七月に藤田観光株買付けのために名義貸しの依頼を受けた際、被告人甲から、同社の株式をできるだけ多く集め発行済株式総数の一〇パーセントを取得して、同社に対する影響力を拡大、強化したい旨の説明を受けて、これを信用しており、本件買付けのため名義貸しの依頼を受けた際も、藤田観光株を二〇〇万株買い集めると告げられており、被告人乙は、本件買付けをそれ以前の買付けと同一の理由、すなわち藤田観光株を大量に買い集めるという目的の下に行われるものと理解していたうえ、本件買付けの際の被告人甲の買付け方法の指示も、その理解を変更させるものではなかったから、被告人甲の本件買付けの目的について認識し得ず、また認識もしていなかったから、誘引目的はなかったと主張する。

被告人乙が被告人甲の本件買付けの直接の理由や背景事情を知らなかったことは、これまで述べたとおりであるが、しかし、それらを知らなかったとしても、被告人甲の本件買付けの目的が藤田観光株の株価吊上げにあることを認識することは可能であり、また、被告人乙は公判において、被告人甲が平成元年七月から今回に至るまで藤田観光株を買い付けている目的が、終始藤田観光株を大量に集めることにあると理解していた旨弁解するところ、被告人乙を単なる名義貸人としか考えておらず今回も背景事情についてはその片鱗も語ることのなかった被告人甲が、果たして藤田観光株の一〇パーセントを獲得して同社に対する影響力を強化したいといった話を、被告人乙に告げることがあったか疑問であり、現に被告人甲は、平成元年七月には一旦買った藤田観光株をその二日後に全部売るということを行い、それには被告人乙を使っているのであって、被告人乙としても被告人甲が藤田観光株を一方的に買い集めるだけであるとは、認識していなかったものと推測されるのであり、被告人乙の弁解が公判段階になって初めて主張されたものであることをも併せ考えると、同被告人の前記弁解は、にわかに信用できるものではない。

さらに、たとえ被告人乙が被告人甲の目的が藤田観光株を大量に買い集めることにあったと理解していたとしても、それはいわば終局的な目標というべきものであって、その都度の買付けにおいて他の目的があり得ることまでも否定するようなものではなく、被告人乙自身が公判で、被告人甲の真意が何処にあるのか測り難いところがあると述べるように、被告人甲のその都度の買付け依頼が右の大量買集めの目的の下にのみ行われるとは限らず、その他の目的をも持っていることがあり得ることは、これまで被告人甲の藤田観光株の買付けの依頼を受けた状況から承知していたものと推測されるので、被告人乙が被告人甲の意図が藤田観光株の大量取得にあると理解していたとしても、それは、今回の被告人甲の買付けの指示方法等から遅くとも四月二〇日後場終了までには、被告人乙は被告人甲が藤田観光株の株価の吊上げを目的としていると認識したと、認定することの妨げとなるものではない。

したがって、弁護人の前記主張は理由がない。

3 「変動取引」についての認識

四月一九日の被告人甲による本件買付けの開始以後、現に藤田観光株の株価が上昇して変動していることは、被告人乙においても承知しており、被告人甲の本件買付けの目的を認識した後においても、被告人甲の同株の買付けによってその株価は変動するであろうと、被告人乙が認識していたことは、優に認められるところであるから、被告人乙は、四月二三日及び同月二四日における本件買付けが、市場価格を変動させる可能性のある売買取引であると、すなわち変動取引の要件を満たす売買取引であると認識していたといえるのである。

五被告人両名の責任形式について

1 被告人両名の責任形式を論じる前提として、まず、一般的に相場操縦罪における実行行為について検討する

証券取引法一二五条二項一号は、「何人も、証券取引所に上場する有価証券等について、有価証券市場における有価証券の売買取引等を誘引する目的をもって、単独又は他人と共同して、当該有価証券の売買取引等が繁盛であると誤解させ、又は当該有価証券等の相場を変動させるべき一連の有価証券の売買取引をしてはならない。」と規定するところ、同法一〇七条が「有価証券市場における売買取引は、当該有価証券市場を開設する証券取引所の会員に限り、これをなすことができる。」と規定しているため、証券取引所に上場する有価証券について売買取引をすることを内容とする右一号の相場操縦罪は、証券取引所の会員である証券会社の代表者その他の従業員によってのみ犯すことのできる犯罪、すなわち刑法六五条一項にいう身分によって構成すべき犯罪であると解する考えがある(前出協同飼料事件控訴審判決参照)。なるほど、証券取引法一二五条二項一号にいう売買取引と同法一〇七条にいう売買取引とを同義に解するときは、そういう見解を採らざるを得ないかもしれない。しかし、各法条の解釈に当たっては、当該法条の立法趣旨に最もよく適合した解釈をするのが相当であり、特に証券取引法のように各種の立法目的から様々な規定を設けている法律にあっては、例え同一の言葉を使っていても、法律全体としての整合性に混乱を生じさせない限り、各法条の立法趣旨に即して解釈して差し支えないものと考える。そこで考察すると、同法一〇七条は、証券取引所が会員組織であり、証券取引の機能充実と公正確保のため、その開設する証券取引所での取引を会員に限る趣旨であると解される。それに対し、同法一二五条二項一号は、証券取引所に上場する有価証券について人為的に相場を操作することによって、本来自然で正常な需給関係によって形成されるべき相場形成を乱す行為を禁圧しようとするものであって、そうした行為は、なるほど証券取引所での買付け、売付けが必要であってもそれを会員証券会社に委託することによって、現に本件に見られるように、社会的実態として何人もなし得るのであるから、右法条の人為的に相場を操作する行為を禁圧しようとする立法趣旨をよりよく達成しようとするならば、同号は証券取引所の会員に限らず、広く一般人のそうした行為を禁止しているものと解するのが相当であり、そうであるからこそ、同号は「何人も」と規定し、その名宛人を限定していないと解されるのである。そうすると、同法一二五条二項一号にいう売買取引とは、証券取引所会員である証券会社への買付け・売付けの委託から当該証券会社によるその買付け・売付けの実行までを含めて、社会的実態として当該有価証券の売買と見なされる一連の行為全体を指すと解すべきである。そして、何人がそうした一連の行為全体としての売買を行ったと見なされるかは、必ずしも取引名義や法的効果の帰属等にとらわれることなく、当該全体としての売買の実行意思の決定への関与の程度や全体を構成する個々の行為への関与の程度、さらには実質的経済的効果の享受などを考慮し、社会的実態に即して決せられるべきものと解される。

2 そこでまず、被告人甲の責任について検討すると、被告人甲が藤田観光株に五二〇〇円の値付けを行う必要があったことは、これまで述べてきたとおりであり、それに基づいて、被告人乙に名義を借りて藤田観光株の買付けを行うこととし、現実にも同被告人に値段を指定するなどして買付け注文の仕方を指示し、買付けの結果についても被告人乙を介して報告を受けて把握し、株買付けのための資金や買付けの委託のための証券会社に対する保証金等も準備していることからすれば、被告人甲こそが藤田観光株の本件買付けである売買取引全体の実行について意思決定をし、個々の買付け注文の発注についても決定し、買付けの結果による経済的効果も自ら享受していたといえるのであって、被告人甲が本件藤田観光株の売買取引を行ったといえることは明らかであり、藤田観光株の売買取引による相場操縦罪の実行正犯としての責任を負うべきといえる。

3 これに対し、被告人乙は、藤田観光株の株価の引上げを図る自ら固有の必要性を有せず、また、被告人甲と相協力して同株の株価の引上げを図る動機も有しなかったことは、これまで述べてきたとおりであり、個々の買付けの値段の指定や発注の仕方も被告人甲の指示に基づいて行っており、買付けの結果についても経済的効果を享受する関係にはなかったといえるから、被告人乙が本件での四月二三日及び二四日の藤田観光株の売買取引を主体的に行ったとはいえず、ただ同被告人は、被告人甲の本件買付けの目的を認識した後において、その買付けのための証券会社への注文の発注など、被告人甲の売買取引を幇助する役割を果たしたに過ぎないと認められるので、相場操縦罪の幇助犯の責任を負うと解される。

4 検察官は、被告人甲について、別表二記載の本件売付けが本件買付けとともに相場操縦罪を構成する一連の売買取引に含まれるものとして公訴を提起しているところ、前記のとおり、本件売付けは右の一連の売買取引に含まれないので犯罪を構成しないが、本件売付けを含めた全体が包括的一罪をなすものとして起訴されているものと解されるので、被告人甲に対し、主文において一部無罪の言渡しはしない。

また、検察官は、被告人乙について、被告人甲と同様の売買取引の範囲につき相場操縦罪の共同正犯として公訴を提起しているところ、前記のとおり、被告人乙は、本件買付けのうち四月二三日及び二四日の二取引日において自己が買付けの注文を出した分についてのみ、相場操縦罪の幇助犯の責任を負うに過ぎないのであるが、右二取引日を含め四月一九日から行われた本件買付け全体が包括的一罪を構成すると解されるので、被告人乙に対し、主文において一部無罪の言渡しはしない。

5 検察官は、起訴状についての釈明及び冒頭陳述において、被告人両名が、C、Dと、さらにナショナル証券のE、エース証券のA、大和證券のF、シティーコープのGといった証券会社の外務員と共謀したと述べ、これらC、D及び各外務員も相場操縦罪の共同正犯の責任を負うものと主張するので、この点について触れておく。

藤田観光のC及び飛島建設のDについては、前記のとおり、いずれもテーエフシーの一〇〇億円問題を解決するため、被告人甲との間で藤田観光株を五二〇〇円で引き取ることを約し、そのため同株の市場価格を右価格まで吊り上げることを謀議し、株買上げの資金を提供するなど協力をしたのであり、右株価吊上げの必要性を自ら有し、その結果についても利害関係を有していたから、実行正犯である被告人甲の行為を利用して自分たちの意思を実現したといい得るのであり、本件相場操縦について共謀共同正犯としての責任を負うものと解される。

本件買付けを担当した各外務員は、藤田観光株が仕手銘柄であり、かつ注意銘柄であることを熟知しており、その専門的知識をもってすれば、各外務員の担当した範囲に限っても、被告人乙から出された買付けの注文が人為的な相場の変動を意図したものであることは認識し得たと一応推認することができる。しかし、これらの者は、顧客である被告人乙の注文を忠実に実行し、市場での株の買付けを行ったに過ぎず、被告人甲の本件買付けの直接の動機を知らなかったのは、被告人乙と同様である。したがって、これら証券会社の各外務員は、全体としての売買取引の一端に関与したに過ぎず、その全体としての売買取引の実行の意思決定に参画しているものでもないから、各自が被告人乙から買付けの委託を受けて市場で注文を実行した範囲で、それぞれ相場操縦の幇助犯としての責任が問われることがあるにとどまると解するのが相当である。

(法令の適用)

一  被告人甲について

罰条 包括して平成四年法律第七三号附則一七条により同法による改正前の証券取引法一九七条二号、一二五条二項一号、刑法六〇条

刑種の選択 懲役刑を選択

刑の執行猶予 刑法二五条一項

訴訟費用の一部負担

刑事訴訟法一八一条一項本文

二  被告人乙について

罰条 包括して平成四年法律第七三号附則一七条により同法による改正前の証券取引法一九七条二号、一二五条二項一号、刑法六二条一項

刑種の選択 懲役刑を選択

法律上の減軽

刑法六三条、六八条三号

刑の執行猶予 刑法二五条一項

訴訟費用の一部負担

刑事訴訟法一八一条一項本文

(量刑の理由)

本件は、東京証券取引所を舞台に、同所第一部上場企業の株式について、その株価を四取引日の間に三七八〇円から五二〇〇円まで一挙に吊り上げるということが行われた事案であり、予め株価吊上げの価格と株価操縦の期間を定め、株買上りの資金を用意した上、連日売り物を買いあさって、ストップ高やそれに近い値段まで買い上がり、カンヌキという手法を使うなど強引ともいうべき方法でもって株価の高騰を図った典型的な相場操縦の犯行であり、こうした露骨な相場操縦が行われたということは、証券市場に対する信頼を少なからず失わせ、また一方、そうしたことを許す市場環境にあったというのも、自由で公正な証券市場という望まれる状態にはいまだ遠い感を与えかねない。

ところで、本件は被告人甲の主導で行われた犯行であるが、そこには同被告人の証券市場に対する考えが如実に表れているといえる。すなわち、被告人甲は、債務処理問題を藤田観光株の売買で処理する合意ができ、そこで同株の市場価格を吊り上げる必要が出ると、自ら仕手筋として知られた自己の立場に慢心し、証券市場を玩ぶがごとく本件を敢行したものであって、そこには、目的のためには手段を選ばず、他への影響も省みず法を軽視して憚らない態度が窺えるのである。したがって、被告人甲は、強い非難を免れない。

しかし他方、本件は、過去の刑事訴追を受けた同種事案と比較して、犯行期間が短期間であり、比較的浮動株の少ない株式であったため、本件買付けの対象となった株以外に一般投資家等によって売買された株数は多いとはいえず、直接の実害は比較的少なくて済んでおり、経済的不利益という面では一般投資家に及ぼした影響は自ずと限度があるとみられる。また、藤田観光のCや飛島建設のDは、対被告人甲との関係で問題解決を迫られていたとはいえ、本件相場操縦に参画し、買上り資金を用意するなど、本件犯行を敢行するについて果たした役割は小さくない。さらに、買付けの委託を受けた証券会社においても事情を知りながら加功するなど、本件相場操縦のような不正行為を抑制できない状態にあったことも否定できない。これらの点は、本件起訴された被告人らの量刑に当たっても、考慮せざるを得ない。

被告人乙は、被告人甲の意図を知りながらも犯行に加担し続けた点で、一定の非難を免れないが、被告人甲から直接の見返りの経済的利益を得ることもなく、その役割は幇助にとどまり、被告人甲に利用されたに過ぎないともいえるのである。

なお、検察官は、被告人甲がその保有する藤田観光株を飛島リース等に本件相場操縦で吊り上げた価格で売却して得た利益が巨額であるとして、それを不利な情状として考慮すべきであると主張するが、相場操縦罪は、証券市場における自由と公正の確保を保護法益とし、それを侵すものとして人為的に証券市場での相場を操作することを禁止しているのであって、右の株の売却のような証券市場外における当事者間の契約に基づく行動は、右の保護法益と直接関係するものではないので、それを情状として考慮することは、相場操縦処罰の範囲を超えることとなって相当でないと解されるので、検察官の右主張は採るを得ない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官松浦繁 裁判官朝山芳史 裁判官渡邉英敬は、転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官松浦繁)

別表

一 買付け表

番号

取引年月日

(平成二年)

取引成立時間

取引名義人

買付け委託先

証券会社

株数(株)

単価(円)

四月一九日

午後 一時二〇分

常興株式会社

ナショナル証券

一〇、〇〇〇

三、七八〇

四月一九日

同 一時二八分

右同

右同

五、〇〇〇

三、七九〇

右同

同 一時三五分

右同

右同

六、〇〇〇

三、八〇〇

右同

同 一時五二分

朝日企画有限会社

大和證券

一、〇〇〇

三、八五〇

右同

同 一時五七分

右同

右同

五、〇〇〇

三、九〇〇

右同

同 一時五九分

右同

右同

三、〇〇〇

三、九〇〇

右同

同 二時四三分

常興株式会社

ナショナル証券

二、〇〇〇

三、九〇〇

四月二〇日

午前一〇時三六分

右同

右同

三、〇〇〇

四、〇五〇

右同

同 一〇時四〇分

右同

右同

一、〇〇〇

四、〇七〇

一〇

右同

同 一〇時四一分

右同

右同

二、〇〇〇

四、〇七〇

一一

右同

同 一〇時四三分

右同

右同

一、〇〇〇

四、〇八〇

一二

右同

同 一〇時四八分

右同

右同

三、〇〇〇

四、一〇〇

一三

右同

同 一〇時五〇分

右同

右同

一、〇〇〇

四、一〇〇

一四

右同

同 一〇時五一分

右同

右同

八、〇〇〇

四、一〇〇

一五

右同

同 一〇時五一分

右同

右同

一、〇〇〇

四、一一〇

一六

右同

同 一〇時五四分

右同

右同

三、〇〇〇

四、一五〇

一七

右同

同 一〇時五九分

右同

右同

一、〇〇〇

四、一五〇

一八

右同

午後 一時一五分

朝日企画有限会社

大和證券

四、〇〇〇

四、二四〇

一九

右同

同 一時一五分

右同

右同

一、〇〇〇

四、二四〇

二〇

右同

同 一時一九分

右同

右同

五、〇〇〇

四、二四〇

二一

右同

同 一時二〇分

右同

右同

一、〇〇〇

四、二五〇

二二

右同

同 一時二一分

右同

右同

二、〇〇〇

四、二六〇

二三

右同

同 一時二一分

右同

右同

一、〇〇〇

四、二六〇

二四

右同

同 一時二一分

右同

右同

一、〇〇〇

四、二八〇

二五

右同

同 一時二一分

右同

右同

一、〇〇〇

四、二九〇

二六

右同

同 一時二二分

常興株式会社

エース証券

一、〇〇〇

四、三〇〇

二七

右同

同 一時二六分

右同

右同

一、〇〇〇

四、三〇〇

二八

右同

同 一時二六分

右同

右同

三、〇〇〇

四、三二〇

二九

右同

同 一時二六分

右同

右同

一、〇〇〇

四、三五〇

三〇

右同

同 一時三〇分

右同

右同

一、〇〇〇

四、三五〇

三一

右同

同 一時三二分

右同

右同

一、〇〇〇

四、三五〇

三二

右同

同 一時三九分

右同

右同

五、〇〇〇

四、三五〇

三三

右同

同 一時五一分

右同

右同

一、〇〇〇

四、三五〇

三四

右同

同 一時五一分

右同

右同

二、〇〇〇

四、三七〇

三五

右同

同 一時五四分

右同

右同

一、〇〇〇

四、三六〇

三六

四月二〇日

午後 一時五四分

常興株式会社

エース証券

一、〇〇〇

四、三七〇

三七

右同

同 一時五五分

右同

右同

一、〇〇〇

四、三八〇

三八

右同

同 一時五五分

朝日企画有限会社

大和證券

一〇、〇〇〇

四、三八〇

三九

右同

同 一時五五分

右同

右同

三、〇〇〇

四、三八〇

四〇

右同

同 一時五八分

右同

右同

二、〇〇〇

四、三九〇

四一

右同

同 一時五八分

右同

右同

二、〇〇〇

四、三九〇

四二

右同

同 二時〇〇分

右同

右同

二、〇〇〇

四、四〇〇

四三

右同

同 二時〇九分

常興株式会社

エース証券

二、〇〇〇

四、四〇〇

四四

右同

同 二時二五分

右同

ナショナル証券

一、〇〇〇

四、四〇〇

四五

右同

同 二時三〇分

右同

右同

一、〇〇〇

四、四〇〇

四六

右同

同 二時三五分

右同

右同

五、〇〇〇

四、四〇〇

四七

右同

同 二時三九分

右同

右同

二、〇〇〇

四、四〇〇

四八

右同

同 二時四七分

右同

右同

三、〇〇〇

四、四〇〇

四九

右同

同 二時五二分

右同

右同

二、〇〇〇

四、四〇〇

五〇

右同

同 二時五八分

右同

右同

一、〇〇〇

四、四〇〇

五一

四月二三日

午前 九時二三分

右同

右同

三、〇〇〇

四、四九〇

五二

右同

同 九時二四分

右同

右同

六、〇〇〇

四、五〇〇

五三

右同

同 九時三二分

右同

右同

六、〇〇〇

四、六〇〇

五四

右同

同 九時三三分

右同

右同

八、〇〇〇

四、六〇〇

五五

右同

同 九時四五分

右同

右同

五、〇〇〇

四、五九〇

五六

右同

同 九時四五分

右同

右同

二、〇〇〇

四、六〇〇

五七

右同

同 九時四八分

右同

右同

一、〇〇〇

四、六一〇

五八

右同

同 九時五三分

右同

右同

一五、〇〇〇

四、六四〇

五九

右同

同 九時五七分

右同

右同

一、〇〇〇

四、六四〇

六〇

右同

同 九時五九分

右同

エース証券

三、〇〇〇

四、六六〇

六一

右同

同 一〇時〇〇分

右同

ナショナル証券

一、〇〇〇

四、六四〇

六二

右同

同 一〇時〇二分

右同

右同

一、〇〇〇

四、六四〇

六三

右同

同 一〇時〇三分

右同

右同

二、〇〇〇

四、六四〇

六四

右同

同 一〇時〇五分

右同

エース証券

一、〇〇〇

四、六六〇

六五

右同

同 一〇時〇六分

右同

右同

二、〇〇〇

四、六六〇

六六

右同

同 一〇時〇七分

右同

右同

二、〇〇〇

四、六六〇

六七

右同

午後 一時〇七分

朝日企画有限会社

大和證券

一、〇〇〇

四、七二〇

六八

右同

同 一時〇八分

右同

右同

二、〇〇〇

四、七四〇

六九

右同

同 一時〇九分

右同

右同

六、〇〇〇

四、七五〇

七〇

右同

同 一時一〇分

右同

右同

五、〇〇〇

四、七六〇

七一

四月二三日

午後 一時一一分

朝日企画有限会社

大和證券

四、〇〇〇

四、七六〇

七二

右同

同 一時一二分

右同

右同

五、〇〇〇

四、七六〇

七三

右同

同 一時一三分

右同

右同

四、〇〇〇

四、七七〇

七四

右同

同 一時一三分

右同

右同

三、〇〇〇

四、七八〇

七五

右同

同 一時一五分

常興株式会社

ナショナル証券

一、〇〇〇

四、七〇〇

七六

右同

同 一時一七分

朝日企画有限会社

大和證券

五、〇〇〇

四、七六〇

七七

右同

同 一時一九分

右同

右同

一一、〇〇〇

四、七九〇

七八

右同

同 一時二〇分

右同

右同

一五、〇〇〇

四、八〇〇

七九

右同

同 一時二〇分

常興株式会社

ナショナル証券

一七、〇〇〇

四、八〇〇

八〇

右同

同 一時二一分

右同

右同

六、〇〇〇

四、八〇〇

八一

右同

同 一時二一分

右同

右同

一、〇〇〇

四、八〇〇

八二

右同

同 一時二二分

右同

右同

五、〇〇〇

四、八〇〇

八三

右同

同 一時二二分

右同

右同

八、〇〇〇

四、八〇〇

八四

右同

同 一時二七分

右同

エース証券

三、〇〇〇

四、八〇〇

八五

右同

同 一時三〇分

右同

右同

五、〇〇〇

四、八二〇

八六

右同

同 一時三二分

右同

右同

二二、〇〇〇

四、八五〇

八七

右同

同 一時三五分

朝日企画有限会社

大和證券

一一、〇〇〇

四、八五〇

八八

右同

同 一時三七分

右同

右同

一〇、〇〇〇

四、八五〇

八九

右同

同 一時三七分

右同

右同

一、〇〇〇

四、八五〇

九〇

右同

同 一時四〇分

常興株式会社

ナショナル証券

一〇、〇〇〇

四、八〇〇

九一

右同

同 一時四〇分

右同

右同

一、〇〇〇

四、八〇〇

九二

右同

同 一時四三分

右同

右同

五、〇〇〇

四、八三〇

九三

右同

同 一時四三分

右同

右同

一五、〇〇〇

四、八五〇

九四

右同

同 一時五〇分

右同

右同

一一、〇〇〇

四、八四〇

九五

右同

同 一時五一分

右同

右同

六、〇〇〇

四、八五〇

九六

右同

同 一時五二分

右同

右同

一、〇〇〇

四、八五〇

九七

右同

同 一時五三分

右同

エース証券

五、〇〇〇

四、八六〇

九八

右同

同 一時五三分

右同

右同

五、〇〇〇

四、八七〇

九九

右同

同 一時五五分

右同

右同

一一、〇〇〇

四、八八〇

一〇〇

右同

同 一時五五分

右同

右同

一一、〇〇〇

四、八九〇

一〇一

右同

同 二時〇五分

右同

ナショナル証券

一、〇〇〇

四、八八〇

一〇二

右同

同 二時〇七分

右同

右同

七、〇〇〇

四、八八〇

一〇三

右同

同 二時〇九分

右同

エース証券

一、〇〇〇

四、八五〇

一〇四

右同

同 二時一六分

右同

右同

九、〇〇〇

四、八五〇

一〇五

右同

同 二時一七分

右同

ナショナル証券

一、〇〇〇

四、八五〇

一〇六

四月二三日

午後 二時二一分

常興株式会社

ナショナル証券

一、〇〇〇

四、八五〇

一〇七

右同

同 二時四四分

右同

エース証券

一、〇〇〇

四、八五〇

一〇八

右同

同 二時五〇分

右同

右同

四、〇〇〇

四、八五〇

一〇九

右同

同 二時五一分

右同

右同

六、〇〇〇

四、八五〇

一一〇

右同

同 二時五一分

右同

右同

一、〇〇〇

四、八八〇

一一一

右同

同 二時五一分

右同

右同

八、〇〇〇

四、八九〇

一一二

右同

同 二時五五分

右同

右同

一、〇〇〇

四、八八〇

一一三

右同

同 二時五五分

右同

右同

八、〇〇〇

四、八九〇

一一四

右同

同 二時五六分

右同

右同

一、〇〇〇

四、九〇〇

一一五

右同

同 二時五九分

右同

右同

一、〇〇〇

四、八七〇

一一六

右同

同 二時五九分

右同

右同

九、〇〇〇

四、八九〇

一一七

右同

同 二時五九分

右同

右同

五、〇〇〇

四、九〇〇

一一八

四月二四日

午前 九時〇六分

右同

ナショナル証券

七、〇〇〇

四、八九〇

一一九

右同

同 九時〇八分

右同

右同

二、〇〇〇

四、八九〇

一二〇

右同

同 九時〇八分

右同

右同

一、〇〇〇

四、八九〇

一二一

右同

同 九時〇九分

右同

右同

一、〇〇〇

四、八九〇

一二二

右同

同 九時一〇分

右同

右同

一、〇〇〇

四、八九〇

一二三

右同

同 九時一〇分

右同

右同

五、〇〇〇

四、八九〇

一二四

右同

同 九時一一分

朝日企画有限会社

大和證券

二〇、〇〇〇

四、九〇〇

一二五

右同

同 九時一一分

常興株式会社

ナショナル証券

一、〇〇〇

四、八九〇

一二六

右同

同 九時一二分

右同

右同

二、〇〇〇

四、八九〇

一二七

右同

同 九時一八分

朝日企画有限会社

大和證券

六、〇〇〇

四、八九〇

一二八

右同

同 九時一八分

右同

右同

一二、〇〇〇

四、九〇〇

一二九

右同

同 九時二一分

右同

右同

一、〇〇〇

四、九四〇

一三〇

右同

同 九時二三分

右同

右同

三、〇〇〇

四、九五〇

一三一

右同

同 九時二六分

右同

右同

三、〇〇〇

四、九七〇

一三二

右同

同 九時二六分

右同

右同

一、〇〇〇

四、九九〇

一三三

右同

同 九時二七分

右同

右同

四、〇〇〇

五、〇〇〇

一三四

右同

同 九時三四分

右同

右同

二、〇〇〇

四、九五〇

一三五

右同

同 九時三五分

右同

右同

一、〇〇〇

四、九六〇

一三六

右同

同 九時三六分

右同

右同

一、〇〇〇

四、九七〇

一三七

右同

同 九時三八分

右同

右同

五、〇〇〇

四、九八〇

一三八

右同

同 九時四〇分

右同

右同

一、〇〇〇

四、九九〇

一三九

右同

同 九時五六分

右同

右同

一、〇〇〇

四、九七〇

一四〇

右同

同 九時五七分

右同

右同

二、〇〇〇

四、九九〇

一四一

四月二四日

午前 九時五八分

朝日企画有限会社

大和證券

二、〇〇〇

五、〇〇〇

一四二

右同

午前一〇時一五分

吉田親令

東和証券

一、〇〇〇

五、〇四〇

一四三

右同

同 一〇時一五分

右同

右同

四、〇〇〇

五、〇五〇

一四四

右同

同 一〇時二三分

朝日企画有限会社

大和證券

一、〇〇〇

五、〇三〇

一四五

右同

同 一〇時二四分

右同

右同

六、〇〇〇

五、〇四〇

一四六

右同

同 一〇時二九分

右同

右同

一〇、〇〇〇

五、〇五〇

一四七

右同

同 一〇時三三分

右同

右同

一一、〇〇〇

五、〇九〇

一四八

右同

同 一〇時三三分

右同

右同

二、〇〇〇

五、一〇〇

一四九

右同

同 一一時〇〇分

右同

右同

一〇、〇〇〇

五、一〇〇

一五〇

右同

午後 一時〇一分

右同

シティコープスクリム

ジャーヴィッカーズ証券

七、〇〇〇

五、一〇〇

一五一

右同

同 一時〇一分

右同

右同

一、〇〇〇

五、一〇〇

一五二

右同

同 一時四八分

右同

右同

二、〇〇〇

四、九八〇

一五三

右同

同 一時四九分

右同

右同

二、〇〇〇

四、九九〇

一五四

右同

同 一時四九分

右同

右同

一七、〇〇〇

五、〇〇〇

一五五

右同

同 一時五〇分

右同

右同

一、〇〇〇

五、〇〇〇

一五六

右同

同 一時五一分

右同

右同

三、〇〇〇

五、〇五〇

一五七

右同

同 一時五一分

右同

右同

一、〇〇〇

五、〇三〇

一五八

右同

同 一時五二分

右同

右同

一、〇〇〇

五、〇三〇

一五九

右同

同 一時五二分

右同

右同

一、〇〇〇

五、〇三〇

一六〇

右同

同 一時五三分

右同

右同

一、〇〇〇

五、〇二〇

一六一

右同

同 一時五三分

右同

右同

八、〇〇〇

五、〇三〇

一六二

右同

同 一時五四分

右同

右同

一、〇〇〇

五、〇三〇

一六三

右同

同 一時五五分

右同

右同

一、〇〇〇

五、〇五〇

一六四

右同

同 一時五六分

右同

右同

一六、〇〇〇

五、〇八〇

一六五

右同

同 一時五六分

右同

右同

一、〇〇〇

五、〇八〇

一六六

右同

同 一時五七分

右同

右同

一、〇〇〇

五、〇九〇

一六七

右同

同 一時五七分

右同

右同

三、〇〇〇

五、〇九〇

一六八

右同

同 一時五七分

右同

右同

二、〇〇〇

五、〇七〇

一六九

右同

同 一時五八分

右同

右同

五、〇〇〇

五、〇七〇

一七〇

右同

同 一時五八分

右同

右同

二、〇〇〇

五、〇八〇

一七一

右同

同 一時五九分

右同

右同

二、〇〇〇

五、〇九〇

一七二

右同

同 二時〇〇分

右同

右同

三〇、〇〇〇

四、一〇〇

一七三

右同

同 二時〇九分

右同

右同

一、〇〇〇

五、一三〇

一七四

右同

同 二時〇九分

右同

右同

二、〇〇〇

五、一五〇

一七五

四月二四日

同 二時〇九分

右同

右同

一、〇〇〇

五、一五〇

一七六

右同

午後 二時一一分

朝日企画株式会社

シティコープスクリム

ジャーヴィッカーズ証券

四、〇〇〇

五、一八〇

一七七

右同

同 二時一二分

右同

右同

一、〇〇〇

五、一九〇

一七八

右同

同 二時一二分

右同

右同

三、〇〇〇

五、一九〇

一七九

右同

同 二時一二分

右同

右同

七、〇〇〇

五、二〇〇

(合計 七四一、〇〇〇 株)

別表

二 売付け表

番号

取引年月日

(平成二年)

取引成立時間

取引名義人

買付け委託先証券会社

株数(株)

単価(円)

四月二三日

午後 一時二〇分

山本広一

エース証券

五、〇〇〇

四、八〇〇

右同

同 一時二〇分

山本陽一

右同

一、〇〇〇

四、八〇〇

右同

同 一時二〇分

右同

右同

一、〇〇〇

四、八〇〇

右同

同 一時二〇分

右同

右同

八、〇〇〇

四、八〇〇

右同

同 一時三七分

山本周一

右同

一、〇〇〇

四、八五〇

右同

同 一時四三分

山本広一

右同

七、〇〇〇

四、八五〇

右同

同 一時四三分

山本陽一

右同

四、〇〇〇

四、八五〇

右同

同 一時四三分

山本周一

右同

四、〇〇〇

四、八五〇

右同

同 一時五一分

山本陽一

右同

六、〇〇〇

四、八五〇

一〇

四月二四日

午前 九時三二分

山本周一

ナショナル証券

五、〇〇〇

四、九五〇

一一

右同

同 九時三三分

右同

右同

三、〇〇〇

四、九五〇

一二

右同

同 九時三四分

右同

右同

二、〇〇〇

四、九五〇

(合計 四七、〇〇〇 株)

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